日本語教師の告白ー私は技能実習生を見殺しにした

管理人の一言

技能実習生の集合講習施設で、初めて担当したクラス。目をキラキラさせて日本語を学ぶ「彼」はそこにいた。配属後、6か月ほどたってかかってきた、ある一本の電話。わたしは、彼のSOSを受け取りながら、見殺しにした。


今回の記事は、わたし自身の告白です。

わたしは、技能実習生の集合講習施設で3年ほど日本語を教えていました。

初めて教室に入った日は、忘れられません。その日は見学でしたが、教室にいる16人ほどの生徒は、皆が本当に楽しそうに、そして真剣に学んでいました。照れも、隠しもせずに、まっすぐに夢を語るその姿はキラキラと輝いて見えました。

技能実習生の入国後講習は、大抵の場合、1ヶ月で修了します。わたしが初めて教えた学生も、1ヶ月で講習を終え、夢と希望を胸いっぱいに抱いて、配属先の企業へと旅立っていったのです。たった1ヶ月といえども絆は生まれるもの。彼らを送り出した日、涙ながらに別れの言葉を告げたのを覚えています。それから、わたしは日本語の授業だけではなく、担任業務や模擬授業にも携わるようになり、多忙な日々を送っていました。

数か月後のこと、ある実習生からテレビ電話がかかってきました。初めて教えた学生の一人で、抜きんでて熱意があり、優秀な技能実習生でした。日本語能力試験の模擬試験で彼がたたき出した点数は、数年たった今でも1,2を争う高さです。しかし、その日はなんだか様子が変でした。「どうしたの」と聞くと、いきなり泣き出してしまいました。話を聞いてみると、配属企業でベトナム人の先輩と日本人の上司にいじめられているということでした。そして弱弱しい声で「もう国へ帰りたい」と口にするのです。私は、衝撃を受けました。あんなに熱心で、まぶしいほど純粋な夢を持っていた実習生が、こんなに変わってしまうとは。しかし、どこかで教師としてのスイッチが入り「あと2年だけだから、頑張ろう?」と口にしてしまいました。そして、組合に相談することなどを提案しました。彼は、「そうですけど…」と言ったまま、黙ってしまいました。

一人の実習生が失踪したと連絡を受けたのは、それから2週間後でした。先日電話で話した彼だとわかったとき、全身がこわばりました。彼はつらいというサインを出していたのに、私は見過ごしてしまったのです。わたしのせいだ、と思いました。あの時、もっと親身に話を聞いていれば、もっとできることを積極的に探していれば…。今は、彼とはもう連絡が取れません。本国へ帰ったという話も聞きません。どこにいるのか、生死もわからない状態です。

彼を思い出すたび、自分が見過ごしたサインの重さに考えさせられます。忙しさにかまけて、日本に住んでいる外国人のSOSサインを見逃してはいけない。そう肝に銘じました。

外国人を受け入れる側には、「ガイジン」ではなく「ニンゲン」を迎える心構えが大切です。そんなメッセージを感じてもらえるように、これからも記事を作っていきます。

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