不倫は人生のスパイス?ー「不倫」パウロ・コエーリョ

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不倫はいけないと分かっているのに。

何一つ不自由はないのに。

なぜ人は不倫に走るのでしょうか。

4冊目は、ブラジルの作家パウロ・コエーリョの「不倫」(原題:adultery)です。

「不倫」あらすじ

舞台はスイスの首都、ジュネーブ

30代のリンダは、大企業の経営者である夫と結婚し、2人の子どもにも恵まれ、何一つ不自由のない生活を送っていた。

リンダは、自分自身もジャーナリストとして精力的に活動し、家では良妻賢母という、まさにキャリアウーマンの鏡のような人物だ。

175㎝、68㌔という理想的な美ボディに、際限なく使えるお金。身にまとう服はすべてブランド品。

そんな「ごくわずかな人しか手に入れられない理想的な人生」を送っていたが、毎朝目を覚まして思うのは、「ああ、また最悪な一日が始まる」ということだった。

きっかけは、ある作家へのインタビュー。ジャーナリストとして鋭く切り込む彼女に、彼はこういった。

「幸福になることには一片の興味もない。それよりも情熱的な人生を選ぶ。次にどんなことがあるか見当のつかない危険な人生のほうがいい」。

その言葉は、順風満帆で幸せ過ぎる生活を送っていた彼女の心にひっかかった。

次第に、こう思うようになる。

「結婚を境にわたしの時間は止まったのだ」。

「夢のような生活は、裏を返せば悪夢だ」。

「わたしは幸福で完璧な人生を送るのに疲れたのだ」。

原因は、夫との愛のない、義務感のようなセックス。夫相手にもう濡れなくなっていた。

そして、繰り返す毎日と倦怠感。人生が灰色に思え、「鬱」状態の一歩手前に陥るほど思い悩む。

そんな時、ジャーナリストの取材で再会したのは、10代の頃の元恋人で現政治家のヤコブ

ヤコブとの出会いは、彼女の1年を大きく変えていく。

マゾヒズム、ドラッグ、シャーマン、そしてジキルとハイド。

リンダが見つけた、「本当の自由」とは。

失われたロマンスを追い求める女、狩猟本能に動かされる男

以前、男性と女性がモノを選ぶ基準の違いをどこかで読んだことがある。

男性は、モノの形や素材など、物そのものに惹かれて、選ぶ。

女性は、そのモノの背後にあるストーリーにときめいて、選ぶ。

リンダは、ヤコブと一緒にいるとき、束の間「結果なんて考えない怖いもの知らずの少女」に戻ることができる。

ヤコブと会う時、それは彼女が淡い青春のロマンス(と思っていた)を取り戻す時間だったのだ。

「同じシーンを永遠に繰り返す映画」のような人生に、ヤコブが違う意味を持たせてくれることを期待した。

キャリアウーマン、母、妻になる前の、「女性」を感じられる幸せに目覚めた瞬間だった。

一方で、ヤコブにとってリンダは、欲望を満たす女の一人で、「ちょっとした危険なゲーム」のつもりだった。

都合のいい時に、メールを入れて呼び出せば、鬱憤を晴らさせてくれる「動物」だった。

それに気づいたとき、彼女はこういう。

「男が浮気をするのは、遺伝子にそう組み込まれているからだ。女が浮気をするのは自尊心に欠けているからだ。そして、女は身体だけではなく、どうしたって心の一部をも差し出してしまう。

(中略)

男にとって、それは<馬鹿げた間違い>でしかない。女にとっては、母として妻として、自分自身を支えてくれる人たちの愛情を裏切る精神的な罪に思える」。

この言葉をどう捉えるかは、読者次第。

不倫してしまう理由は、「生きがいの乏しさ」

リンダは、取材していて、シャーマンと出会う。そして、つい尋ねてしまう。

「人はなぜ不貞を働くのでしょう」と。彼の答えはこうだ。

「結婚している人間が、理由はどうあれほかに相手を見つけたいと感じるのは、必ずしも夫婦関係がうまく行っていないからではない。セックスが一番の動機とも思えない。それよりも、倦怠感や人生への情熱の喪失、生きがいの乏しさではないだろうか。さまざまな原因が重なったんだろう」。

「一つになろうとしても、ばらばらになったものをどう戻せばよいのかわからない。それゆえ、われわれは常に満たされぬ気持ちを抱えている。社会が禁じ、法を作ったところで、それで問題解決というわけにはいかない」。

リンダは、それを聞いて思う。

「最後に、あきらめの時代がやってくる。夫は仕事と称して家の外で過ごす時間が増えるし、妻は必要以上に子どもの世話に没頭する。現在のわたしたち夫婦がいるのはこの段階で、現状を打破できるのならばなんでもしたい」。

こういう家庭は、日本でも少なくないはずだ。

配偶者を愛している、けれどもつまらない、倦怠感を感じる、満たされない。

不倫はそんな日常のスパイスになったのだろうか。

リンダが、最終的にどのような結論を下したのかは、本書を読んで欲しい。

不倫をされて、許せるか?

この本には、不倫をする側の気持ちがまざまざと描き出されている。

では、不倫をされた側はどうだろうか。

愛し、信じている相手が変わっていくのを見るのは耐え難い屈辱だ。

現代の日本では、すぐに慰謝料を払わせて地獄の底へと突き落としたいという意見を目にする。

許して飲み込むという選択肢を選ぶ人は、ごくわずかだ。

ネタバレになるが、リンダの夫は、すべてを知ったうえで、リンダを許した。

不倫をされたほうは、はらわたが煮えくり返る思いをしながら、屈辱を感じながら、それでもまだ相手を愛していると気づくとき、絶望する。

リンダの夫は、作品の中で名前すら語られない。

しかし、傷つけられながらも妻を愛さずにいられない、名もなき男の言葉は、不倫をしている方にも、されている方にも響くことだろう。

「不倫」はこんな人におすすめ!

夢やロマンスは、大人になっていつまでも追い続けられるものではありません。

不倫をする人は、「一時の気の迷いだった」とか「スパイスが欲しかった」といいます。

結婚してから、人生がつまらなくなった。

毎日毎日、同じことの繰り返しにもう飽き飽きしている。

そう感じている人に、ぜひ読んで欲しい一冊です。

不倫は、本の中だけで十分です。

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